ウォンバットの黄金バット

いろんなバットちゃんです。

#ゲイと東京から遠く離れて 4日目(午前①)

そのマングローブのある浜、というか正確には湾なのだが、そこは島の太平洋側の沿岸のほぼ中程に位置する。

補足すると、マングローブというのは樹木の品種の名前ではなく、汽水域に生息する樹木の群生そのもののことを呼ぶ。

マングローブに生えている樹木自体は、島の沿岸部を歩いていると其処彼処で見ることができるが、広いエリアで群生しているものはこの島でも珍しくなったとのこと。

環境汚染の影響もあってかエリアは年々縮小していっているらしい。

ちなみに、汽水域で生息する樹木の中には、陸上でも生息することができるものもあり、街中の公園で生えているのを見かけることもある。

汽水域でも生息することができる樹木、と言った方が正しいのかもしれない。

何が異なるのかというと、塩分を濾過する機能があるかないかの違いである。

普通の植物に海水を与えると、浸透圧の力によって水分が抜けて、体内に保持することができず、すぐに枯れてしまう。

その一方、マングローブを成す樹木らは、海水の塩分をろ過する機能が根や葉に備わっているために、塩害で枯れることはないのだという。

他の植物には不利なエリアであっても、そこで生きていく術を持っているからこそ、マングローブは群生することに至ったというカラクリ。

これらの知識はすべて、一昨年にマングローブをシーカヤックで巡るアクティビティに参加した際に、ガイドのお兄さんから聞いた話のそのまんまである。

テレビでも見聞きした情報ではあるが、現場で興奮しながら聞いたせいか、よく記憶に残ってしまった。

亜熱帯性の樹木がトンネルのようになっている中、カヤックで進んでいくのは、ちょっとした冒険気分に浸れて、それだけでもかなり楽しかった。

シーカヤックに乗ったのはその時が初めてだったのだが、川と海の間の汽水域は波が穏やかで、陽の光に輝く水面と水上に流れる風が心地よく、一回でその魅力の虜になった。

いかにも亜熱帯なマングローブの醸す雰囲気に酔い、岸辺の山からはヒグラシの声が響いてくる状況に、偏屈な自分の脳みそにもアドレナリンが分泌されまくったのだと思う。

だから、今度やるときは長時間のコースで遊びたいと思っていたのだが、今回は急遽予定を決めたので、前回と同様の短時間のコースにした。

けれど、少しだけ趣きを変えようかと、今回のガイドツアーは別のお店に頼むことにした。

前回は公営の博物館内で運営するガイドツアーだったのだが、今日は同じマングローブ内を巡る私営のお店のガイドツアーにした。

私営の方が500円だけ安いのだが、何が違うのかはよくわからないこともあり、お試しで調査がてら行ってみることにする。

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(待合所から見えるマングローブ一帯)

朝一に行けば他のお客さんはいないかも、という予想は外れ、待合所に到着するとそこそこの人数が集まっていた。

ガイドツアーは決まった時刻で始まるのではなく、ある程度の人数が集まったら断続的に始まるらしい。

なかなかフレキシブルな運営で、思い付きで立ち寄るには便利なように思われる。

料金を支払うとカヤックの発着所に移動し、救命胴着とパドルを渡されて超簡単な漕ぎ方のレクチャーを受ける。
その後、それぞれにカヤックをあてがわれて乗り込んで、いざ出発、という具合に結構忙しない。

自分は初めてではないから良いものの、未経験者にはなかなか手荒いおもてなしっぷりである。

出発するとガイドのお兄さんが、マングローブとは何ぞやについて案内してくれる。

しかし、決まった案内を終えてしまうと、あとは適時ルート案内をするだけで、どんどん自由に遊んで行ってね、という感じ開放されてしまった。

公営の方のガイドでは、いろいろと事細かにマングローブについて解説があったり、写真を撮影してくれたりなどのサービスがあるのに比べると、非常に緩い営業をされている。

これが500円安い理由なのだろうか。

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(カヤックの発着所)

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(聴いてもらってなくてもガイドさんはどんどん進む)

しかし不満というわけではなく、むしろ公営のガイドには自由時間が無かったので、2回目の人には私営ガイドツアーの方が楽しめて良いのでは 、と思った。

終わりの時間も特に制限が無いようで、遠くにさえ行かなければ遊びたいだけ遊んで良いらしい。

なので、思う存分にシーカヤックを楽しませてもらえた。

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(同じタイミングで出発した子たち)

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(のんびりしていたら一人になってしまった)

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(見上げても見慣れないものばかりで楽しい)

一方で、発着所までの帰りの行程は、汽水域に流れ込む川を上っていくので、かなり腕力を要して疲れる。

しかしその途中で、地元のカヤック部の学生たちに抜かれていく様子を見たら、心身ともにかなり癒された。

子供のころからこういう遊びをしていたら、だいぶ異なる人生を送ることになったのではなかろうか。

あっという間に遠くに行ってしまった 学生たちの後ろ姿を見て、過ぎ去ってしまった思春期のころを惜しむ感情が湧いた。

できれば東京でもカヤックをしたいところなのだが、場所も限られるし、車も道具もいるので、なかなか障壁が高いのが難点だ。

そして、かなりのめり込みそうで生活がままならなくなる予感もする。

熱中してしまうと一人きりを好んでしまうので、できれば避けたいところ。

この島に来た時だけやるぐらいで、ちょうどよいのかもしれない。

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(ずっと漕いでいたかった…)

カヤックを降りて道具を返却し、駐車場に停めた車に乗り込んで時間を見ると、午前10時を回ったころだった。

お昼を食べてから宿に戻っても、空港に行くまでの時間には余裕がありそうだ。

島で最後の食事にはなるが適当に軽く済ませて、宿の近くの海を散歩でもすることにして、車のエンジンをかけて来た道を戻る。

岸辺に沿って走ると、先ほどまでは近くにあったマングローブの森が遠くに見えた。

 

#ゲイと東京から遠く離れて 4日目(午前①)