#きょうの水泳教室 本番の日②
当日の泳ぎの様子はエリオがコーチに頼んで、スマホで動画を撮影してもらった。
音声は外したので臨場感には欠けるが、自分の泳ぎを見ていただけると幸い。
まずは 50m自由形から。画面一番右の8コースが自分。
結果は38秒83で7位。
飛び込みスタートは腹を打つこともなく、深く潜りすぎることもなく上手くいった。
ターンの時のタッチで手が滑ったので、少し手間取ったが泳ぎのフォームも大きく乱れることなく泳げたように思う。
リミッターは外せたかというと、落ち着くことに集中していたので少々疑問だったが、プールの水質に感動しながら泳いでいたような気がする(記憶が曖昧)。
水は軽くて透明で、天井からの照明のおかげで、水中で見える視界はとてもキラキラとしていた。
泳ぎ終えて掲示板の方を見ると、自分の名前と共にタイムと順位の記録が、電光掲示板にデカデカと表示されている。
エントリータイムは50秒だったし、普段のプールではどんなに頑張っても45秒はかかっていたのに、大幅に記録を更新することができた。
順位は自慢できるものではないが、タイムは自分で自分に自慢できる結果を残せたことに、我ながら驚いてしまった。
プールから上がるとエリオの組がスタンバイしているところだった。
次の平泳ぎの招集もされているので、待機所の近くでエリオの泳ぎを見る。
エリオはスタート台に着くと、初めてなのにクラウチングスタートの姿勢を取っていた。
緊張していた割に大胆なチャレンジをするものだと思う。
エリオは目標通りの結果を残して、35秒台で6位だった。
プールから上がってきたエリオの姿は、泳ぐ前よりひと回り細くなったようで、浮いてなかった腹筋の割れ目がくっきりと見える。
たった 50mでどれだけの体力を消耗したのだろうか。
もしや火事場の馬鹿力みたいなものが働いて、自分のリミッターを外した結果なのかもしれない。
ふと自分の方はどうだろう、と見直してみると、ゴーグルのゴムが緩くなっている。
50mを1回泳いだだけで、頭が小さくなったのだろうか。
緊張が解れたのか笑いが止まらないエリオと互いに労いながら、次の平泳ぎのレース前の待機所に向かう。
平泳ぎは同じ組で、エリオは1コース、自分は7コースで泳ぐことになっていた。
自分たちのエントリータイムは50秒だったが、他の5名はみな30秒〜35秒でエントリーしている。
差がつくのは明らかであることと、自由形を終えたばかりの高揚感もあって、待っている間もあまり緊張することはなかった。
自由形の時と同じように、自分の名前が会場にアナウンスされる。
コース前で待機して、逸る気持ちを落ち着かせる。
観客席からは、またコーチたちがエリオと自分の名前を呼んで応援してくれている。
腕を上げて声援に応え、スタート台に上がる。
先っきは不安に思えた景色も、もう見慣れたものに見える。
エリオは反対端の1コースなので姿を見ることはできないが、またクラウチングスタートに挑戦するのだろうか。
自分もやってみようかなぁ、と迷いが生まれたが、身体が固くて姿勢を取るのが難しく、スタート台から落ちかねないのでやめておいた。
スタート台は前傾姿勢を取りやすいように、傾斜が付いているので、気を抜くとバランスを崩して落ちてしまいそうになる。
次はクラウチングでスタートしたいなぁ!と思いつつ、スタートの合図に集中して待つ。
電子ピストルの音が聴こえると、空気を切る音と共に水の中に潜る音が聴こえた。
今回の飛び込みスタートも上手くいった。
潜水から顔を出して前方を見ると、中央のコースを泳ぐ人が随分前を泳いでいるが、隣のコースの人の姿が見えなかった。
意外と速く泳げているのかも!?と少し心が浮ついてしまう。
ターンした後は5コースの人に並ばれて、競りながら泳ぐ。
自然と勝ちたい!という欲が湧いたものの、リズム良く泳げていたフォームを変えてギアを上げるのは難しく感じられた。
経験の差が足りないのだろうか。
互いに力を振り絞って泳ぐものの、差は開くことなく、ほぼ同時にタッチしてゴールした。
50m平泳ぎの結果は、なんと43秒80で4位だった。
最後まで競り合った隣の5コースの人には、結局0.08秒差で負けてしまった。
たった0.08秒差だったのはかなり悔しいが、そもそも過去一度も50秒を切ったことがなかったのに、43秒台で泳げたことに驚いた。
まさかここまで自分が泳げるとは思ってもみなかった。
飛び込みスタートであることと、辰巳のプールの水質の良さのおかげもあろうが、予想以上の結果に感動してしばし放心状態になった。
プールから上がると、エリオと落ち合ってタイムはどうだったかと報告する。
エリオは51秒台で7位だった。
それはそれで良いタイムなのだが、自分のタイムを聞くと「やりましたね!」と祝ってくれはしたけれど、若干悔しそうな感情が顔に滲み出ていた。
自分はたぶん自慢げな顔をしていたように思う。
レース後、更衣室で着替えてから観客席に戻ると、コーチたちが労いの言葉をかけてくれた。
コーチたちも想定よりも速い記録に驚いていたようだ。
こんなに速く泳げるならもっと練習しましょうね!と早速発破をかけてくる。
これまでも結構苦しい練習だったのだが!と抵抗するも、機嫌がいいのでヘラヘラと返答してしまった。
エリオのスマホで撮ってもらった動画も受け取って、早速見せてもらう。
若いスタッフさんが撮っただけあって、慣れた感じでセンスのいい動画だった。
席に戻ってエリオと二人で3レース分を見返しながら、あーでもないこーでもないと反省会が始まった。
自分の気になった点は次の通り。
・スタートの反応が遅い(飛び込むのにビビっていた)
・タッチターンに時間がかかりすぎ(他の人のクイックターンは本当にクイックだった)
・自由形のキックで足が外に向きがち(縦に蹴れていないから水を真後ろに押せず推進力にならない)
・身体の軸は真っ直ぐ泳げていた
・平泳ぎはリズム良く泳げていた
・スタート後の蹴伸びでもっと進みたい
・キック後の伸びももっと伸ばしたい
・水中姿勢に課題があるのかも
自分の泳ぎを客観的に見られることはそうそう無いので、何度も繰り返して見てしまったいた。
気づけば大会も終盤のレースになっていて、階下のプールでは25×4自由形リレーが行われていた。
動画の自分の泳ぎと、猛者たちの上手くて速い泳ぎを交互に見て比べる。
まだまだ改善の余地はありそうだ。
終わりかけの頃、スタッフさんが記録証を持ってきてくれた。
なんと 50m平泳ぎは年代別の順位で3位だったようだ。
レースでは4位ではあったのだが、出場者が少なかったおかげだろうか。
いずれにしても嬉しいことだ。
プールからの帰り道もずっとレースの記録と泳ぎの課題について、ずっとエリオと話しながら歩いた。
2人ともちょっとしたハイになっていたのだと思う。
帰りに祝勝会で自分のよく行くカレー屋に寄ったのだけれど、そこでもずっと動画を見ながら反省会が続いた。
何度見てもまったく飽きないし、ずっと楽しかった。
(ハリームとマンディ)
(クルフィとバルフィ)
#きょうの水泳教室 本番の日②