#ゲイと東京から遠く離れて 2日目(昼)
目的地までの途中にあるコンビニに寄って、昼食用におにぎりを買う。
せっかくだから島っぽいものを食べるべきだろうと、スパムおにぎりにした。
いまの奄美大島は鹿児島県に属するではあるが、戦後数年間はアメリカに統治されていたし、何より沖縄本島の方が近いこともあって、食文化では通じるところが多い。
しかし、スパムおにぎりとひとつとっても、沖縄のそれとは少し違って何パターンかある。
沖縄のように握り寿司の形で、ごはんの上にスパムがのったものや、薄焼きタマゴに包まれたもの、おにぎらずのように挟まれたものなどが見られる。
今回は、巻き寿司の上にスパムをのせたタイプのものを買ってみた。
中身はかなりジャンキーな内容で、スパム以外にも、巻き寿司の中にはたまご焼きやツナマヨも入っている。
こういう類いの食べものに目がない自分にとって、それを見ただけでもよだれが出てくる一品だ。
おにぎりを購入した後、駐車場に戻ると12:15ぐらいだった 。
約束は13:00からだったので、微妙に時間が余ってしまっている。
コンビニから次の目的地の染物工房までは、車で15分ほどあれば着いてしまう。
約束の時間には、かなり早すぎる時間だ。
以前、同僚と島を回ったときに、この島にもやはり島時間というものがあって、約束の5分後くらいに尋ねるぐらいでも早いと思われてしまうのだ、 と聞いたことがあった。
30分前に到着しては、かなり早すぎることになるし、お昼休み中であれば迷惑に思われてしまいそうだ。
観光客のすることだから、あまり気にもされないだろうとは思いつつ 、時間調整のために、遠回りをしてから向かうことにした。
途中、道を外れると山の尾根を通る道があり、そこからの眺望はとても見晴らしがよいのを思い出し、天気はそんなに良くはないけれど、そこに行くことにしたのだ。
その尾根の道は、トンネルができる前に使われていた道らしく、いまではほとんど車も通らない。
前回に伺ったときに染物工房の方から聞いたのだが、この道を車が連なって走るのは、正月の初日の出のときに見かけるぐらいなのだそうだ。
この島で使われなくなった道路は、山奥にあるものだと路面も苔むしていたりするものの、この道は山の尾根を通っているので、日当たりもよく心細さを感じることはない。
むしろ、清々しさまで感じられて、一人でいられることがラッキーに思えてくるほどだ。
道路の峠まで来るとパラグライダーの滑走台があり、その近くに簡単な駐車場があるので、そこに車を停めて降りて背筋を伸ばす。
目線の先には、以前来たときと同じように、太平洋と東シナ海が両方眺めが広がっていた。
ちょうど朝日を見た浜辺と、先っき行った浜辺が見られる。
薄曇りの天候ではあったので、絶好の景色とは言いがたいが、見下ろせばそこには島の大地と二つの海がある。
集落の間に走る車や、遠くの海上に船を見かけると、ここから自分が見ているとは思ってもないのだろう、と少し不気味なことをしているような気分になる。
神の視点とはこんな感じなのだろうか。
目で確認できる距離なのに、接触することができないとは、さぞや神様も寂しい思いをしていそうだな、と思いつつ駐車場に戻る。
再び、車を走らせて来た道を戻り、工房のある集落の道を車で進む。
戸建ての住宅と商店、そして小さな作業場が軒を連ねている。
どの宅地にも大小の差はあるが庭があり、必ず何かしらの植物が植わっていた。
各々の庭には、柑橘類の果樹が植えられていることが多く、収穫されずに実をつけたままにしている家ばかりなのが印象的だった。
食べきれないほどになるのだろうか。
しばらくしたら、工房の看板が見えた。
時計を見ると12:50で、まだ早すぎる時間ではあったが、昼食も食べたいので駐車場に車を停めさせてもらうことにした。
案の定、工房はまだお昼休み中だったようで、事務所にも誰もいなくて静かだった。
裏の方から、タバコを吸っていた工房の男性が出てきたので、約束した時間までは車で昼飯を食べながら待ちたい旨を告げると、庭にあるテーブルを使うとよいよ、と言ってもらえた。
御礼を言って、買ったおにぎりと昨日買ったたんかんを食べた。
#ゲイと東京から遠く離れて 2日目(昼)