#ボタニカルホモ日誌 20190210
先週は母の誕生日だったので、お祝いのプレゼントとしてご飯でもご馳走しようかと実家に帰ってきた。
ついでに、去年の母の日に贈った新苗の薔薇の植え替えをするつもりでいた。
5月ごろにはすでに暑いぐらいになっていたし、新苗でもあるので、あまり株に負担をかけないよう、鉢のまま花壇に置いておいてもらったのだ。
しかし、いつのまにか鉢底の隙間から下の花壇の土中まで、根っこが伸びてしまって動かせなくなっていた。
こうなると掘り返して根を切るか、鉢を解体しないと植え替えができない。
根っこもどこまで伸びているかわからず、結構掘り返すことにもなりそうなので、力仕事は自分がやることにしたのだった。
本当は昨日のうちにやりたかったのだが、雪が降っていたから作業をするのは諦めた。
(雪に埋もれる門口に置かれたミニ薔薇)
(ローズマリーはすこぶる元気そう)
(宿根の水仙やチューリップが芽を出していた)
(これが例の下の花壇に根付いてしまった薔薇の鉢植え(中央にある黒色の鉢がそれ))
きょうも土が凍っていたら出直すしかないと思っていたのだが、日中の暖かさもあって、薄っすら積もっていた雪もすっかり消えていたし、土も乾いていたので掘り返すのに苦労は無かった。
この薔薇は野バラに接ぎ木されているので、根っこの部分は野バラとして生きている。
野生に近い野バラは旺盛な勢力があり、繊細な性質を持つ薔薇の接ぎ木先として利用される。
土質を選ばず、吸水力も高くて病害虫にも強い。
それを土台にして多くの薔薇が生きている。
人間で言えば、胃腸を肩代わりしてもらっている感じだろうか。
しかし、冬のこの時期はそんな勢力旺盛な野バラの根っこも休眠期に入っている。
花壇に鉢ごと根付いてしまった薔薇の植え替えをするのは、割りと大手術に近いのだが、休眠期なので根っこを切ってもダメージは少ない。
逆に根っこが古くなるとその働きも弱くなるので、鉢植えの場合は植え替え時に多少の根っこを切っては、新しい根を伸ばすように促したりした方が良いのだという。
それは茎も同じで、冬の休眠期のうちにバッサリと剪定を加える。
今回は新苗だから甘めの剪定にしたが、数年目の大株になると茎を1/2の長さに切り戻したとしてもまだ甘いと見られるほど、人間の臓器であれば死んでしまうだろうと思うほどに通常はバッサリと切り戻す。
古い茎を残したままにすると、薔薇は新しく伸びた茎に花をつけるので、だんだん巨大化するのを許容せねばならないし、そうすると枝も密集して風通しが悪くなるので病気にもなりやすいのだ。
花壇にスコップを勢いつけて挿し込む。
野バラと周囲に植わっていた菊やニラバナの根が断ち切れる感触が足に伝わってくる。
肉を包丁で切り分ける感じと、どこか似ていて不思議な感覚に陥る。
土は適度に湿っていたぐらいで重たくもなく、簡単に掘り起こすことができた。
鉢植えを持ち上げると底から、つけ麺大の太さの根が窮屈そうに伸ばしていた。
根っこは枝を伸ばす範囲に広がっていると聴くが、1/3ほどの長さに切り戻した感じだろうか。
万能カッターでプラスチックの苗鉢を裁断し、苗を取り出す。
(万能カッターは初めて使ったけれど、大きめのカッターで刃がノコギリのようにギザギザしていて、とても便利だった)
(土が残っているところは鉢の中にあったところ)
(ナメクジの卵と冬眠中のナメクジの様子)
土の中に透明で粒々したものがあったので、元肥の化成肥料かと思ったのだが、近くに丸まったナメクジがいたので、透明な粒々が彼らの卵だとピンときた。
野バラの根には影響ないだろうが、他の植物の新芽を食い散らかされるので、指で軽くほじくり出すと思いのほかにワラワラと出てくる様子は結構気味が悪かった。
その衝撃で目覚めたのか大きさも様々なダンゴムシがワラワラと出てくるので、指で払うと落ちたダンゴムシはあっという間に土の中や落ち葉の下に隠れて行ってしまった。
ぱっと見、土の上は閑散としているのだが、土の下には考えている以上にたくさんの生き物でいっぱいのようだ。
空いていた鉢に掘り起こした薔薇の苗を置いて、ホームセンターで買ってきた薔薇用の土を入れる。
芽が膨らむ頃に効くように緩効性の肥料を鉢の鉢に沿って置く。
2/3ほどの長さに剪定して終わり。
新芽が伸びる方向を芽の向きから推測しながら切るのだが、はたして上手いことできただろうか。
あと数ヶ月しないと、その正解はわからない。
この薔薇は野バラに接ぎ木されているし、そもそも自身も原種に近い方なので、そんなに心配はいらないはずなのだが、自分が手を加えたことなので、どうにか上手いこと成長してほしい、などとせせこましいことを考えてしまう。
植え替えた鉢の隣にはブルーベリーの木がある。
もう20年以上は生きているだろうか。
枝先にはまだ固いけれども新芽も出ていた。
実はこのブルーベリーは柿の木の下にあり、春になると日陰になる場所に植えられたため、日差しを求めて自らの身体を斜めに傾けた強者だったりする。
これはカロライナジャスミンで、およそ24年前の自分が植えたもの。
コンクリートブロックの穴に土を入れて植えたのだが、かなり大きく成長した上に毎年良い香りの花を咲かせる。
いずれも人間側がそうなるとは思ってもみなかったことだ。
心配したところで人間側に出来ることは限られていて、せめて邪魔をしないことぐらいだ。
「置かれた場所で咲きなさい」とはよく言ったもので、置いた場所で咲いてもらうのはかなり難しいことを考慮すると、随分身勝手な物言いに思えてくる。
そんな立場に自分はいないのに、手間暇をかけた分だけ成果を求めてしまうとは。
植物に対しても、随分と独りよがりなことを考えていたもんだと反省する。
#ボタニカルホモ日誌 20190210