ウォンバットの黄金バット

いろんなバットちゃんです。

#ゲイと東京から遠く離れて 2019年秋(1日目早朝)

JALから指定された大分に向かう飛行機は、7:25発の羽田空港-大分空港の便だった。

自分が指定した時間帯に出発する便ではあるが、一体何時に起きて家を出ればよいのかと、考えるのも嫌になるほどの朝の早さだ。

空港での諸手続きのことを考えれば、できることなら30分前には着いておきたいところ。

ただ、その日はちょうど接近していた台風からの雨と、即位の礼の影響で東京のそこかしこで交通規制が敷かれる計画もあるらしい。

時間ギリギリで行動するのは避けた方が良さそうなのだが、電車とバスのどちらも遅延のリスクがあることは否めない。
よくよく交通規制の予定を調べてみれば、午前10時から始まる予定だった。

大雨の影響で電車が遅延する可能性に比べると、高速バスで羽田空港に向かうことの方が確実のように思えた。

そもそも、接近する台風のせいで飛行機が欠航になる可能性もなくはない。

前日のJALの運行情報では、予定通りの発着になりそうではあるが、早起きして空港に行ったところで欠航になったら、その努力が報われない気もしてくる。

などなど、頭の中で無駄にシミュレーションを繰り返し、出発前日まで、まだ起きてもいないことで溜め息ばかりをついていた。

レンタカーとホテルは予約済みだけど、航空券も含めて飛行機が欠航になれば、費用がかからずにキャンセルできる。

だから、そこまでストレスに感じる必要もないのだけど、前向きに考えようとしても、それは「何も準備しない」と同じことのように思えた。

直前まで旅程が定まらないのは、余計な心配をさせられるからやっぱり苦手だ。

出発の当日になると、スマホの目覚ましのアラーム音で起きたものの、脳みそが重たくて身体が起き上がらない。

タイマーでセットしていた部屋のライトもついて、最大限の明るさが眼に入ると鈍い痛みがしてくる。

しばらくぼんやりとしたいたけれど、前日にセットしていた最後通告のアラームが鳴ったので、覚悟を決めて起き上がる。

半分寝たような状態で軽くシャワーをして、中途半端に終わらせていた荷造りを済ませると、家を出るのにちょうど良い時間だった。

外に出るとまだ薄暗くて、街灯がまだ青白い光を放っていた。

暗いのは大雨のせいなのか、それとも季節が秋へと着実に進んでいる証なのか。

最近、香るようになってきていた金木犀の匂いも、雨粒の匂いで打ち消されてしまっていた。

見慣れない街の様子に違和感を抱きつつ、最寄りのコンビニでお茶を買って近くのバス停に向かう。

そのバス停には屋根があるものの、台風みたいな雨のせいで、屋根の下に立っていても雨が吹き込んでくるほどだった。

バス停にはサラリーマンの男性がキャリーバックと並んで立っていたが、屋根の下にいるのに傘をさしていた。

自分もそれに倣って横に並ぶが、やっぱり服は吹き込んでくる雨で、着ている服が濡れてくる。

数分後にバスが到着すると、蛍光イエローの雨具を着た車掌さんが 、チケットの確認と先客の男性の荷物をバスの荷台に収納する作業を始めた。

数分のことであったが、すでにびしょ濡れになってしまっている。

もしかしたら、前のバス停から濡れていたのかもしれないが、それはそれで気の毒にも思えてくる。

帽子でよく見えなかったが華奢な身体をした若い車掌さんで、帽子の下から覗く襟足は綺麗に刈り上げられていて、青白い頭皮が雨か汗で光って見えた。

聴こえてくる声は10代の響きを持っているが、高卒で入社したばかりなのだろうか。

ついつい、バス会社のキャリアプランがどんなものなのか想像してしまう。

潰しの効かない業種のように思えるが、実際のところはどうなのだろうか。

自分のチケットをチェックしてもらうと、自由席なので空いてる席に座るようにと、まだあどけなく聴こえる声で業務的な案内をされる。

一瞬だけ見えた顔は髭も薄く、やっぱり少年のような顔をしていた。

バスに乗り込むと半分くらいの席が先客で埋まっていた。

片側二席が空いてるところがあったので、荷物を降ろして自分は窓際の席に座る。

雨で濡れた窓の外を見ると、若い車掌の子が無線でどこかと連絡を取り合っているのが見えた。

彼のキャリアプランがどうとか、完全に余計なお世話なことだったなぁと反省しつつ、目線をバスの前方に直して出発を待つ。

眠り直したいところではあるが、バスの中がなかなかに明るくて眩しい。

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他に術なく目を瞑ると、かの人に以前「何様のつもりなのか」と言われたときの記憶が蘇ってきた。

言われたときは、何でそんなことを言われるのか理解ができなかった。

しかし、ひょんなことから距離ができて、そのまま会うこともなくなって、結構な時間が経ってしまった。
そんな風に言われたのか、いまではその理由が何となくわかる。

自分は他人の価値観に土足で入って踏み荒らすきらいがある。

 

 

#ゲイと東京から遠く離れて 2019年秋(1日目早朝)