ウォンバットの黄金バット

いろんなバットちゃんです。

#ゲイと東京から遠く離れて 2018年秋(1日目朝)

北九州空港に到着して、事前に予約していたレンタカーを借りにカウンターへ向かう。

レンタカー屋さんのカウンターはいくつかあったが、見知らぬ名前のレンタカー屋さんだけ長蛇の列ができていた。

地元の業者でなのだろうか。

いくらなのか気になるところだが、予約した時間も迫っているので自分の手配した業者のカウンターに急ぐ。

まだ8時前だというのにカウンターでは担当の方が働いていて、頭の下がる思いがしてくる。

形式張った質問を受けつつ手続きが進む。

しかし、自分が社割での利用で保険など込み込みで申し込み済みだとわかると、一気に手続きが簡素化される。

さらに追加で営業保証の保険を申し込むか確認されたので、少し迷ったが初めての土地での運転なので申し込むことにした。

念のため、担当の方にこの土地独特の運転マナーや習慣はあるのか伺うと、特に独特のルールもなくスピードも出さない方だが、車線変更の仕方が雑がゆえの事故が多いのだという。

自分が気をつけていてもダメな雰囲気を感じたので、先っきまであった保険の追加の迷いが消えた。

一通りの手続きを終えると、空港の外に併設された駐車場へ案内される。

外に出ると予想外にも東京より寒くて驚いた。

海の上にある空港だからだろうか。

それとも日本海と大陸に近いからだろうか。

湿度はあるものの冷んやりとする風で、冷温のスチームサウナにでも入っているかのような寒さだった。

駐車場に停まっていた車も結露で水滴がたくさんだった。

担当の方に「寒さで水滴がたくさんですねぇ」と言うと、「清掃が行き届いてなくてすみません」と言われて、そんなつもりで言ったわけではなかったのだがと恐縮する。

客と業者の立場をわきまえず、また独りよがりなことを言ってしまったようだ。

用意されていたのはシルバーのダイハツムーブだった。

今回は(も)一人旅なので、軽自動車タイプを申し込んでいたのだが、実家でもずっと運転していた車種が充てがわれたので安心する。

担当の方と車体のチェックをしたのち、車のキーを受け取って車に乗り込む。

エンジンの付け方とガソリンカバーの開け方を確認したら、担当の方は空港内のカウンターに戻って行かれた。

まだ日が昇ったばかりで、空港の駐車場を出歩く人もほとんどいなかった。

フロントグラスには水滴がいっぱいで、周囲の景色もモザイクがかけられたように見える。

シンとした車内で、さてどこに行こうかと考える。

相談する相手もいないのでiPhoneで天気予報を確認すると、午後遅くには雨が降る予報だった。

雨が降らないうちにカルスト台地を観に行ってみようか。

マイルの特典航空券を申し込む際に、パソコンなモニターに映し出された画像を思い出された。

高山植物の草が広がる丘陵地に、石灰石の塊が点々と突き出ている光景は、なかなか幻想的で印象的だったのだ。

けれど、いまは晩秋の時期できっと高山植物は紅葉を過ぎた頃合い。

季節の変わり目に広がる景色は、大概は中途半端で絵にはならない。

おそらくは葉は枯れて茶色くなっていて、そんなに眼を見張るものではないだろう。

ただ、カルスト台地は地理の教科書でしか見たことがないし、世に出回るのはどれも同じような写真ばかりでイメージのしやすいものばかりだ。

逆に言えば、いまの頃合いの景色を見られる機会はそうそうない。

有名なのは山口県秋吉台だけど、こんな機会でなければメジャーではない景勝地など行かないだろうし。

やっぱり行ってみる価値はあるかもしれない。

車に備え付けられたカーナビで住所を打ち込むと、空港から1時間弱のところだった。

いまから向かっても、カルスト台地の保存区域にある資料館も開いてないようだ。

羽田でおにぎりを食べたばかりだけど、また朝ごはんでも食べて時間を潰すことにした。

今回の旅で絶対に食べると決めていた店が、ちょうど空港の近くにあるし、それは平尾台への通り道でもあった。

念願の資さんうどんのゴボ天うどん。

以前、一緒に働いていた派遣の子が北九州出身で、その頃手打ちうどんにハマっていた自分に強く勧めてくれて以来、ずっと食べたいと思っていた一品。

長めに茹でてコシのない麺と、カリッと硬めの衣に揚げられたゴボウの天ぷらの組み合わせが、他では味わえない美味しさなのだという。

ネットで調べると資さんうどんは、北九州周辺で展開するチェーン店らしい。

うどんの他にも天丼や牛丼などの丼ものに、おでんも売りにしているようだ。

車のエンジンをかけてワイパーを動かすと、フロントグラスの水滴が取り除かれて、視界が一気にクリアになる。

空にはたっぷりの水分で重そうな雲が広がっていた。

アクセルを踏んで駐車場を出ると、海の上にある空港と九州本島にかけられた長い橋を渡る。

右を見ても左を見ても倉庫や工場が延々と立ち並んでいる。

橋を渡りを終えると幅広の道路が連なり、行き交うトラックの数も増えて、ここが工業の街であることを思い知る。

第一の目的地である資さんうどんは、そんな工業地帯を出てすぐのところにあった。

駐車場に入ると、トラックと乗用車が追突したらしく、警察が来るのを待っているところに出くわした。

ホントに事故が多いところなのかもしれない。

やっぱり保険に入っておいて正解だったようだ。

車を停めて店内に入ると、思った以上に広いお店だった。

ファミレスよりは狭いけれど、牛丼店に比べるとだいぶ広い。

ひとり客用のカウンターテーブルに、テーブル卓と座敷席もある。

厨房も奥行きがあって、客席と同じくらいの広さがありそうだった。

客の入りはまばらだったが、従業員のおばさん達が注文の品を手際よく捌いている。

空いてる席ならどこでも良いと案内されたので、窓際のテーブル卓に座る。

近くには自分と同じように飛行機で到着したばかりらしいカップルが座っていて、ゴボ天うどんを注文していた。

他には近くの工場で働いてそうな男性が、数名カウンターテーブルに座っている。

福岡の男性というと、同性愛者の男性方から魅惑の対象と見られて久しいが、自分のアンテナにはそれほど感知するものが無かった。

北九州と福岡で違うものなのだろうか。

それとも自分のアンテナの問題なのだろうか。

メニューに目を移すといろいろとそそられるものばかりだったが、初志貫徹でゴボ天うどんに欲を出してまる天を追加してを注文すると、程なくテーブルに運ばれてきた。

これが念願のゴボ天うどん(まる天追加)。

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(丼がデカい)
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(まる天も美味かった)

甘めのつゆに、たしかに柔らかく茹でられたうどんと硬い衣のゴボ天が合う。

柔らかい麺といってもモチモチツルツルとしていて、喉越しも良かった。

頻繁に食べても飽きは来ないだろう味で、他には無いものであることを考えると、地元民に愛されるのも当然だろうと思えてくるものだった。

わざわざこのうどんのために、また北九州まで来たいかと問われればそれは否定するけれども、このお店を勧めてくれた派遣の子の気持ちが、ありがたいものに感じられてならなかった。

会計を済ませて駐車場に出ると、事故車のところにようやく警察が到着したようだった。

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やはり運転には気をつけなければ。

土地勘の無いところだけに、一抹の不安を感じつつ平尾台に向かうことにした。

 

 

#ゲイと東京から遠く離れて 2018年秋(1日目朝)