#ゲイと東京から遠く離れて 2018年秋(1日目早朝)
JALから指定された飛行機は、早朝6時台に羽田発の便だった。
自宅から行こうとすると、始発に乗ってもギリギリ間に合うか間に合わないかの時間。
前日に浜松か新宿のネットカフェで泊まろうかとも考えたのだが、当日、最寄駅から羽田へのリムジンバスで行くことにした。
それでも搭乗手続きやらを考えると、飛行機の出発時間にはギリギリで、リムジンバスが時間通りに運行するものなのかもよくは知らなかったので、実際に乗ってみるまではずっとヤキモキしていた。
まだ暗い時間にバス停に並ぶと、同じバスの利用者が数人集まってきて利用者の意外な多さに驚く。
普段ならばまだ寝ていても不思議ではない時間だ。
よく見知った街の風景も見たことのない空気感を醸している。
街灯は明かりを灯しているけれど、照らし出されるのは眠った街の姿だ。
そんな静寂の中をバスが重そうなエンジン音を鳴らして到着し、係りの人が慌ただしく乗車客の点呼を取る。
iPhoneで予約後に送られてきたメールを係りの人に見せると、行き先を確認された後に乗車を案内される。
バスの席はほぼほぼ空いていたし、自由席だというので、前方窓際の席に座ることにした。
バスの中だけが青白い蛍光灯で明るく、窓の外を見ても暗くてよく見えなかったが、バスが走り出すと目が慣れてきて外の様子も見えてきた。
まだ早朝ということもあって、出歩く人もいないし、すれ違う車でさえ少なかった。
自分の寝ている間の世界はこんな感じなのかと、不思議な気持ちで外を眺めた。
家族や友人と旅に出かける様子の乗客もおしゃべりをすることなく静かに過ごしている。
しかし出発してみれば、予定よりも早いペースでバスは運行してくれて、飛行機に遅れる心配もなくなった。
高速道路に入ると景色も単調になったこともあり、ウトウトとしてくる。
羽田空港が近づいてくると、窓の外の景色もキラキラとしてくるが、灯の数は終電の頃よりかは圧倒的に少なく、その景色は黒色の割合が多く見えた。
夜中まで騒がしい東京も、夜明けの直前ともなると一旦停止をするようだった。
まだ稼動前という雰囲気でとても静かな様子に感じられた。
羽田空港には予定よりも30分以上早く到着してしまった。
まだ気温も低く、昼間の気温を想定した上着では寒過ぎたようで、小走りで空港内に入って行く。
空港内は空いている売店も少ない時間だったが、大きな荷物を抱えて旅にはしゃぐ様子の客や、眠そうにしている客でいっぱいだ。
自分も荷物は預けずに手荷物で機内に持ち込むしていたので、さっさと保安検査を済ませて登場ゲートの方に向かう。
暇つぶしに空港内を探索しにウロチョロするには荷物が邪魔なので、大人しく飛行機の見えるロビーの椅子に座って、コンビニで買ったおにぎりとお茶を飲んで待つことにした。
登場予定の飛行機はすでにスタンバッていたが、昨晩からそこにいたのかもしれない。
搭乗時間が近づくと、空港の向こうから朝日が昇ってきた。
だだっ広い空港はオレンジ色の日差しを遮るものはなく、飛行機の機体を照らすし、ロビーでぼんやりする自分の顔を照らしてくる。
室内にいると熱は感じられないが、とにかく眩しい。
離陸した後の朝日のある方はどんな景色が見られるのだろうか。
搭乗後、席から見える朝日。
滑走路から眺める朝日は雲に遮られることなく、くっきりとした輪郭を見せた。
上空からの羽田空港と東京の街。
上から見ると意外とコンパクトな街に見える。
奄美大島に行くときは中部地方を過ぎた頃に、南方へ航路を変えるのだが、今回はずっと沿岸部上空を航行していく。
いくつもの空港を越えていく。
こんなに空港があるんだなぁと感心すると共に必要性に疑問を感じたりもする。
しかし線路と駅の維持よりは、意外とお金も人手も資源もかからないのではないかとも思う。
どちらが良いかという話ではなく、インフラは幾重にもあった方が良いのは確実なのだが。
九州と本州の境目が見えると北九州空港ももうすぐのはずだ。
北九州空港が近づくと、沿岸部は予想外にも山の連なる丘陵地で、その間に様々な工場が並んでいた。
山を切り崩して海を埋め立てて建てたのだろうか。
というか、工場しか見えない。
関東近郊も工場は多いが居住区も隣接してたりするのだが。
山の中に隠れてしまっているのだろうか。
空港に到着すると、再び昇ったばかりのような朝日が見えた。
二度めの朝を迎えた気分になって、ずいぶんと西の方に来たのだと実感する。
考えてみれば、九州に降り立つのは初めてのことだったっけ。
機内モードを解除して、家族のLINEグループに到着したことだけ連絡すると、「よかったね」というスタンプが姪から返ってきた。
#ゲイと東京から遠く離れて 2018年秋(1日目早朝)