ウォンバットの黄金バット

いろんなバットちゃんです。

#ゲイと東京から遠く離れて 2018年秋(出発前日まで)

いま奄美大島にはバニラ便とJAL便が就航しているが、数年前はJAL便しか就航していなかった。

そのため、価格競争など起こりようもなく、片道4万円前後のチケットが平然と売られていて、割安で奄美大島に行こうとするならば、ツアーで行くという選択肢しかなかった。

しかし、JALカードのマイルを貯めると、特典航空券で行くと15,000マイル(15,000円相当)で往復できる。

それを島出身の同僚から教えられて、自分はすぐにカードをつくって会員になり、陸マイラーとしてセコセコとマイルを貯める日々が始まった。

日々の生活費をカード払いにし、マイルが倍になるお店を選んで買い物をすると、結構、すぐにマイルは貯まる。

いまでは一年に一回は奄美大島に行ってもマイルが余るほど貯まっており、有効期限が切れて失効するのを気にする日々だ。

有効期限が近づくマイルがあると、カード会社からメールでアナウンスされるので、実際に気づかないまま無駄にすることはない。

しかし予定が組めないままに時期を逸する予感だけはあって、元来の貧乏性から何か上手い手立てはないものかと思案していた。

何度だって奄美大島に行っても良いのだが、別のところにも行ってみたい欲もある。

ただ、それは漠然とした欲なので具体的な行き先は思い浮かばなかった。

そんな感じで、マイルの管理サイトをぼやぼやと眺めていると、「どこかにマイル」というバナーが目に入ってくる。

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https://sp.jal.co.jp/jmb/dokokani/

仕組みがよくわからないが、往復6000マイルで特典航空券が使えるらしい。

噂で聞いたことはあるが、行き先はJALが指定する場所のみだというので、使うには気が引けていたものだった。

自分は、移動先の場所や日時を強制されることにものすごくストレスを感じる性分をしており、就職先も異動や転勤が無い会社を選んだほどなのだ。

しかし、通常最低でも10,000マイル必要な特典航空券が6,000マイルで済むのはお得だ。

よくよく説明書きを見てみれば、サイト上でランダムに表示される4つの行き先の組合せは自分で選び、そのうちの一つをJALが指定してくるという段取りらしい。

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希望する旅程(月日と出発時間帯)を指定して検索すると、画面上に4つの行き先候補がランダムで表示される。

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(きょう試しにやってみた画像)

行き先の観光地の画像と合わせて表示されるので、旅のインスピレーションも働きやすい工夫もされている。

表示された行き先に魅力的に思えなかったら、再検索のボタンを押すとまた別の組合せが表示される。

1日に再検索できる回数は決まっているようだが、何度も更新すると何度も同じ候補地が表示されたりもする。

どうやら指定した旅程で空いている便の行き先が表示される、という仕組みらしい。

北海道や青森の空港が表示される確率が高いが、そこに那覇石垣島も入り込むこともあった。

沖縄などは普段は15,000マイルも必要になるので、そこを6,000マイルで行けるのはなかなかにお得である。

しかし、せっかくならば行ったことのない土地にしたい。

そう思いながら更新ボタンをクリックし続け、何度目だっただろうか。

ようやく4つの行き先候補すべて、行ったことのない土地が表示されたので申し込んでみた。

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徳島/女満別/帯広/北九州

どこも行ったことのない場所だ。

今回はお試しなので一泊二日という短さだけれど、朝から晩まで出来る限りの滞在時間を設けられるようにしてみた。

第一希望は女満別で知床を散策できるといいなぁ、と思ったのだが、それは自分がすでに知ってるから思うことで、ほかの候補地でも調べてみれば行ってみたい場所が出てくるはず。

はたしてどこになるのだろうかと待っていると、翌日には行き先確定のメールがJALから届いた。

確認すると行き先は「北九州」となったようだ。

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まったく馴染みのない街である。

古くからの炭鉱や工業で栄えたイメージはあるが、旅先としてどう過ごせばよいのだろうか。

とりあえずサムネの画像にあるカルスト台地は魅力的に思えた。

旅程は晩秋の頃になるから、また違う光景が広がっているのだろう。

ざっくりとでも旅程を考えて、宿やレンタカーを予約しておかなければ。

そう思って動き出そうとした矢先、姉が倒れたという知らせを受けたのだった。

搬送先の病院に行けばクモ膜下出血で、手術で一命を取り留めたものの、心配がなくなるまでしばらくはICUに入ることになった。

家族に旅行の話をするなどもちろん憚られることで、旅行に行けなくなることよりも最悪な事態を覚悟される状況だった。

申し込んだマイルは変更ができない。

ホテルやレンタカーの予約は、事態が落ち着くまで控えることにした。

最低限、一般病棟に移れるようになったら北九州へ行くことにしよう。

そう思って旅程までのおよそ3週間は、東京と病院を行ったり来たりで忙しなく過ぎていった。

一般病棟に移る目処が立ったのは、旅程の2日前のこと。

その頃には結構な疲れも溜まっていたので、旅行に行く気力も低下傾向にあった。

ずっと馴染みのある土地にはいたものの、しばらく置かれていた状況は非日常そのもので、また別の非日常を求めて旅へ出る必要が感じられなかったのだ。

ただ、一度違う土地に行くことで、普通になりかけた非日常の流れを断ち切ることもできそうな予感がした。

罪悪感は無くはない。

しかし姉も気にせず行って来いと言う。

介護していた義兄と姪と甥には飛びっきりのおみやげを買うことにして、北九州空港近くのホテルとレンタカーを予約した。

けれど、具体的な旅程など決まっていることは飛行機の便とホテルとレンタカーだけで、それ以外はまったく検討もしていなかった。

行ってみて考えるほかない。

予習の足りない旅に出るのは不本意ではあるが、その分、発見のある旅にすることができれば良いのかもしれない。

試されるのはこれまで蓄えてきた自分の教養だ、そう思った。

 

 

#ゲイと東京から遠く離れて 2018年秋(出発前日まで)