ウォンバットの黄金バット

いろんなバットちゃんです。

#ボタニカルホモ日誌 20190512

この部屋に越してきて、その年の夏に買った月桃の苗がだいぶ大きくなった。

4年目になるのだろうか。

草丈は1mを越す高さになって、葉も広がると畳半畳ぐらいの幅になっていた。

冬の間は部屋の中で冬越しさせていたのだが、ずっと部屋の隅で結構な存在感を放っていた。

10号鉢いっぱいに根が張ってしまっているようで、ここ1年くらいは水やりをしても鉢底からすぐに漏れ出てくる。

大きく育てれば花が咲くかと思って育てていたが、一向に咲く様子がない。

もしやこれは生命の危機を感じないと花を咲かせない方なのかもしれない、と思って、株分けをすることにした。

株分けをしても鉢が増えてベランダが狭くなるばかりなので、あまり気は進まないのだが、このまま育てて巨大化されても困る。

しかし枯れてしまうのも嫌なので覚悟を決めて、手を加えることにした。

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株分けするのを見越して、ビニール製の鉢植えにしていたので、株を引き抜くのは比較的簡単だった。

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思っていた以上に根が詰まっている。

蘭とか観葉植物のような太くて白い根と、その間に細い根がギッシリと蔓延っていて、土はほとんど無くなっていた。

鉢いっぱいにあった土は、一体どこへ行ってしまったのだろうか。

何かの力か働きで分解されて、月桃の栄養分になったのかもしれない。

鉢底の方でギッチリと詰まっていた根を触るとビクともしない固さをしている。

厄介なことになったぞ、ひとり途方に暮れる思いがしたが、今さら引き戻すわけにもいかない。

 

だいたいの植物の株分け作業は、あまり要領良くできた試しがなく、正直、得意としてない。

年数の経った株ほど、茎の根元は頑丈な根茎で繋がっていることが多く、刃物を用いても難儀するほどの固さだったりして、ほぼ力技でこなさざるを得ない。

本来は、手で割り切るのが衛生面的に一番とされているのだけれど。

てか、手で割り切るなど、リンゴを握りつぶすほどの握力があっても、おそらくは難しいように思う。

いざ腕力で割り切ろうとしても、その手にはミシミシと細胞体が避ける感覚が、いま生きる生命体が抵抗する感覚となって伝わってくる。

植物といえども、自分以外の生命体に手を加えるわけだから、何かしらの躊躇いと覚悟を必要になってくる。

いくら腕力に自信があっても、生きている人の腕の骨をそのまま折るのは、特殊な情動にかられない限り難しいのと同じ。

だから株分け作業をすると、心身ともにグッタリしてしまって苦手なのだ。

しかし自分の他に作業を進めてくれる人はいない。

暗くなる前に終わらせなくては。

 

月桃の株分けの仕方についてネットで検索してみると、あまり根はいじらない方が良いと書いている人が多くいた。

しかし、うちの株のように根がギッシリと詰まっていると、ある程度は絡み合った根をほぐさないとならない。

心を鬼にして指を頑丈な根元に突っ込んで、徐々に固くなった土と根をほぐしていく。

当然、切れて落ちる根も多くなるが、心を鬼にして進める。

すると、ふんわりと月桃の良いにおいが香ってきた。

 

ちなみに月桃というのはショウガの仲間で、九州南部から沖縄辺りで自生している。

用いるのは主に葉っぱの部分ばかりで、乾燥させたり蒸留抽出したりして、香り成分を虫除けや消毒ローションや化粧水に利用されている。

ビターなフローラル系の香りがして気に入っているのだが、この香りの成分は根にもあるらしい。

根は吸水する必要もあるし、きっと葉と違って細胞膜が薄いから、空気に触れると月桃の香りがしやすいのかもしれない。

月桃の抵抗反応で悲鳴を上げるように、香りを放っているのかもしれないのだけれど。

 

ある程度の根をほぐすことができたら、茎ごとに根を選り分けられるようにしたら、茎と茎の間をつなぐ根茎部分を切って分ける。

しかし、やはりというか根茎部分がほぼ塊になっていて、手の力で割ることは完全に無理そうだった。

聖護院カブほどの大きさをした、かなり固いショウガの塊を想像してもらうと良いかもしれない。

仕方がないので、万能のこぎりで塊を半分に切ることにした。

ただそれでもまだ大きいので、その半分をさらに2:1の大きさに株分けして、3つの鉢に植え付けていく。

土は他の鉢植えで使っていたものを再利用で、肥料はいま与えると肥料やけしそうなので、根が回復した頃を見計らってから与えることに。

のんびりやると根が日差しに当たったり、乾燥のせいで傷んだりしてしまうので、休憩なしでぶっ通しの作業になった。

いい匂いが辺りに漂うが、大きく伸びた葉がわしゃわしゃと顔に当たって結構な煩わしさだった。

立ち上がって腰を伸ばすと強い痛みが背中に走るが、なんとか形にできた安心感で一気に力が抜ける。

最後に、活性剤をいつもより薄めにした水を、鉢底から出てくるまであげたら、ひとまず今日の株分けの作業は終わりだ。

 

根も減ってしまった分、水を吸う力もその分なくなっているはずなので、もしかしたら、葉も切り取って少なくした方が良いのかもしれない。

しかし、結構な外科手術の後に葉を落とすのも、なんだか忍びない思いがしてくるので、とりあえず様子を見てみることにした。

初めてのことだし、わからないことがあったら実際に確かめる他はない。

丈夫な方々なので枯れる心配は無いとは思うのだが、あとは自力で回復してもらうのを願うしかない。

↓は根茎の塊の断面の画像。ショウガに似た色と形をしている。

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#ボタニカルホモ日誌 20190512