#ゲイと東京から遠く離れて 2020冬(大阪1日目早朝)
起きた時には羽田行きのバスの出発15分前だった。
昨晩の自分を憎らしく思いながら、半分だけ済ませていた荷造りを無心になって済ませる。
しかしシャワーも浴びる時間はないし、顔を洗う時間さえもない。
とにかくバスに乗り遅れてしまうと、すべてのことがパーになる。
最悪のパターンを想定したシミュレーションで動くものの、宇宙飛行士のように完璧な訓練などやっていないので、当然のことながら穴が出てくる。
家を出たところで、モバイルバッテリーと機内で読もうと思っていた雑誌と、マスクを持ってくるのを忘れたことに気づく。
しかし引き返す時間はない。
家のすぐ目の前にあるバス停には、車掌さんが点呼をとっていたし、少し先の交差点では羽田行きのバスが赤信号で停まっていた。
雑誌はいいとしても、旅先でモバイルバッテリーが無いのはかなり心許ない。
あとマスクである。
飛行機に乗るのにマスクを忘れるなんて、いまのこのご時世に致命傷ではないか。
感染予防に効果は薄いのだから、そこまで気にする必要はないのかもしれない。
けれど、寝坊の上に忘れ物をしたことの心理的ダメージのせいで、ちょっとしたことでも神経が逆撫られてしまう。
バスに乗り込むと、この路線には珍しく5割くらいの席が埋まっていた。
窓際の空いている席に座って窓の外を見ると、オレンジ色の外灯に照らされた商店街の様子が見える。
まだ日の出前の時間。
寝坊するほど寝てしまっていたし、急いで準備をしたせいで、すっかり目が覚めてしまった。
ただシャワーも浴びてないので、寝癖だらけの頭と洗ってない顔のベタつきが気になる。
空港にシャワーとかあったっけ、と検索すると、羽田空港では国際線ターミナルにはあるようだった。
行先の関西国際空港にはあるらしいが、いずれにしてもそこそこの値段が張る。
市内で朝からやっている銭湯があるかと検索すると、24時間営業のサウナと並んで、心斎橋にある銭湯がヒットした。
時間のロスにはなるが致し方ない。
スマホで移動経路と所要時間を計算して、当面の段取りをつける。
それに比例するかのように電池の残量が減っていく。
モバイルバッテリーの忘れ物はどうやってリカバーしようか。
1日は持つだろうと思ってはいたが、それは普段会社で充電しているからで、旅先とは条件が異なる。
家電量販店で買うか、携帯キャリアの店舗で充電してもらうか。
スマホに行動を制限されるなんて実に不愉快だな、と考えていたら、羽田空港に着いた。
(羽田空港第一ターミナル)
(予定よりもだいぶ早い到着)
(空港の中はマスクをした人たちでいっぱいだった)
(料亭屋さんの朝食を食べようかと思ったけど、値段がわからないのでやめた)
(飛行機も予定通りに離陸するらしい)
(保安検査がゴーンのせいなのか本当に厳しくなっていた)
#ゲイと東京から遠く離れて 2020冬(大阪1日目早朝)